「あんた、男が好きなのかよ」
の言葉にレノはきょとん、として。
言われた質問の意味に気付き、レノは軽く笑った。事の始まりは数時間前、ちょっとした興味本位でを誘ってみた。
男も女も知らなさそうな、あの表情がどんな風に変化するのか、見てみたかった。
だから、場末のラブホテルに連れ込んで、最初に言われたその言葉に一瞬、レノは何て答えればいいか思いつかなかっただけ。
「男でも女でも気持ち良くイカせて貰えればそれでいいぞ、と。俺に相手の気持ちはカンケーないし、と」
「ひでぇな」
「時間が勿体ないだろ。その口をつぐんでさっさと服を脱がせろよ、と」
些かむっとして。ベッドに腰掛けたまま何もしようとしないレノのスーツの上着に乱暴に手をかける。
その手をレノが掴むと不適な笑顔で笑う。
「皺になるだろ、と」
気にするのかよ、と小さく呟きながら、は丁寧に上着から袖をだして床に落とすとワイシャツのボタンを上から一つずつ外す。程よく筋肉のついた引き締まった身体に一瞬目を奪われて、つい、と視線を外す。男の身体にそこまで色気が出るのか?と自問自答しながら、はそれ以上ボタンを外す事が出来ずに、かといって、どうしたらいいのか思いつかずにレノの上に乗った状態で指を弄ぶ。
「何?ヤる前に視姦したいのかな、と」
の視線に気付いて、レノがにやにやと笑って脱がされたワイシャツとスーツを手にとって、のネクタイに手をかけて外す。それを絞めて、レノは淫猥な視線をに流してから、の腰に手をかけて上からどかすとベッド脇に立つ。
「みたいなら見せてやるぞ、と」
ゆっくり、絞めたネクタイに人差し指をかけて、引き抜くように緩めながら首にかけた状態にする。
真紅の髪を束ねていたゴムを外し、口にくわえる。黒いスーツを右腕だけ脱いで半分だけ着た状態でワイシャツのボタンを一つずつ外す。さっきと同じ、筋肉質の身体が見えて、意識していないのに視線をそらしながら、昂ぶった感情が下腹部に集まる感覚には焦りながら、レノに指をのばす。上着とワイシャツを一緒に脱ぐ。ゆったりとした動作でその上着とワイシャツを床に落とすと伸ばされた指に自分の指を微かに絡め、レノはにっと笑いながらへ背中を向けて振り返りながら淫猥な瞳を投げつける。
「焦るなよ、若者、と」
正面を向いてかちゃちゃとベルトの金具を外す音を遠くに聞きながら、は我に返るように頭を振る。
同じ男でどうしてここまで色気が違う!?頭の中に鳴り響く、警鐘に反する感情を何て呼べばいいんだろう。
「俺をみてろよ、と。この顔も、身体も、腰も、全部を使って、立てないくらいに愛してやるから、と」
「俺は」
別に男が好きなわけじゃない。と続けようとして、その口をレノは無理矢理唇で塞ぐ。熾烈を割るようにして入り込むレノの舌に目を白黒させながら、感じさせようとして艶かしく動く舌に応えるように、もたどたどしく舌を絡ませていく。何度か向きを変えてキスした後に、ようやく唇を離したレノが真っ直ぐにの視線を射抜く。
「滅多にないぜ?俺が利益とか駆け引きなしに抱いてやる何て事はな、と」
理性とか、理論とか、そんなものが吹っ飛ぶくらいに目の前の真紅が淫猥に笑う。
その淫猥さは。
まるで一つの完成された芸術品のようで。思わずは目の前がクラクラするのを覚えた。この眩暈にも似た感覚はさっきのキスだけじゃない。これから起こるのであろう快感が、今まで味わってきたものよりも格段に凄いものだと身体はどこかで判っている。
「覚えておけよ、と」
スーツのパンツのボタンを外した状態でレノがを上からねめつけるようにみる。
「俺に本気になるんじゃないぞ、と」
「本気になったら、お前のせいだ」
あん?と眉をしかめてレノがの顎に指をかける。
「俺に本気で溺れたら、ツライぞ、と」
「……っ」
言葉も出せずにがレノを軽くにらみつけた。肩に手を置いて一気にスプリングの利いたベッドに押し倒す。スプリングがぎしりと悲鳴をあげる。身体を沈めさせて、レノはゆっくりとの首に甘く吸い付いて赤い鬱血をつける。
「んん…」
動物で言うならマーキング。ただ、これは自分の所有物だという事を誇示するための動作に思いもよらない声が漏れて、はぴくんと身体を震わせた。上半身にレノの素肌が直接触れる。ただ、それだけなのに自分の血液総てが下半身に集まっていくような感覚に、が再び身体を震わせる。
「恐くなんかないぞ、と」
怖い…?違う。この感情は、怖い、ではない。
舌先で唇の端を舐めてレノがゆっくりと指先で鎖骨からなぞっていく。なぞりながら胸の突起を指で刺激する。既にぷくりと膨らんだその膨らみを若干身体をずらした状態で舌先で刺激を与える。
「ぅあ…!?」
くすぐったさと気持ちよさに身を捩らせようとしては上半身を起こす。昂ぶっているのモノがレノの身体にあたってレノがくつくつと笑う。
「仕方ないな、と」
何が仕方ないのか、と聞こうとする前に馬乗りになっていたレノが身体をずらして下着ごとパンツを脱がす。腹につきそうなくらい勃っているのモノを口に含む。指先でやんわりと刺激を加えながら舌先を先端に這わせる。
「…な、…ま…っ」
ぴくん、と反応しては息を飲む。
制止の言葉は受け付けないというようにレノが丁寧に愛撫を繰り返す。こういう行為が初めてな訳ではない。でもなのに。
わざとぴちゃぴちゃと発泡音を出しながら何度も先端を執拗に刺激する。身体を起こしたまま、がシーツをぎゅっと握って荒い息をしながらレノの口元を真っ赤な顔をして見つめている。ちらり、と上目でみて目があって、ごくりとが喉を鳴らす。耐え切れずにが背中からベッドに崩れ落ちる。イく瞬間の顔を見られるのは何となくまだ恥ずかしくて、仰向けの状態では顔を隠して何度も荒く呼吸する。
「ちょ…っと……レノ……」
「出るならだしていいぞ、と」
根元からゆっくりと舐めあげてから喉奥にまで入れる。とろとろと先走りの体液が流れ、あふれて指を汚す。
「うぁ…っ!?」
何度か強弱をつけて吸う裸のレノの背中に右手で傷をつけて、ぐっと射精を我慢していた。上半身沈め、レノがの腰を掴んで固定すると口に含んだ状態で軽く歯を立てる。思わぬ刺激に掴んでいたシーツを余計に力強く掴んでは堪えきれずに喘ぎ声をもらした。
「ふぁ…っっ」
歯を立てた状態で強弱をつけた刺激を繰り返されて、がもつわけもなく、びくっと身体を震わせてがレノの口内に解き放つ。大量に放たれた精液を飲み干してレノが身体を起こす。茫然と放心状態のの太股の内側にまた鬱血を残しながらの身体を引っ繰り返す。膝を立たせて腰を持ち上げさせるとむき出しの双丘の中心にある後蕾に指を這わせた。
「ひぁっ!?」
ぴくん、と僅かに萎えかけていたのモノが鎌首を持ち上げる。出したばかりとは思えないほど先走りの体液がぽたぽたとシーツに染みを作っていく。
ぎゅっと目をつぶって荒く息を繰り返す。
「初めてか、と」
「あ、たり…まえ、だ…!」
温めてないローションを後蕾にかける。つぷ、と中指をゆっくり挿入させる。ローションの冷たさに身体を震わせて、押し上げてくる窮屈さと気持ちよさには力を抜こうとして深呼吸を繰り返す。
指がようやく中ほどまでもぐりこんだ頃、いきなり痛みが後蕾に走る。
「いっつ……!」
「充分濡れてるのに痛いのか、と。俺のはツライぞ、と」
指を根元まで入れると腸壁を傷つけないように指の腹で擦りあげていく。
「や…だ…っ。あ…っ!?」
ぞわぞわとする感覚に涙声になりながらが無意識に足を開いて指を奥へ奥へと誘うように、腰を妖艶に動かす。
「嫌だ、って言いながら腰は艶めかしく動いているぞ、と」
指の挿入を繰り返しながら、ちゅぷと音を立てながらの耳元で低く囁く。ローションと愛液が混ざって滑らかに挿入を繰り返せるのを見てレノがくつくつと笑った。
「ち…ちが…う…」
「何が違うのかな、と。…のココは…俺がほしい、ほしいって言ってるぞ、と」
「んん…っ」
枕を口にあてて声を押し殺してがゆっくり自分の手を自分のモノに伸ばして絡ませる。その様子に気付いたレノが指を増やして後蕾を軟らかくほぐしながら絡んでいく指を静かに見つめた。
「自分で慰めるのかな、と」
「だっ…て…レノが…」
「俺がどうかしたのかな?と」
背中に口付けて足の間に身体を潜らせる。
「意地悪い…から、だろ…!」
はき捨てるように言ってレノをじっとにらみつける。
「意地悪ね、と。そんなこと言っていいのかな、と」
指を引き抜いて、に、と笑う。
「優しくしてやるつもりだったんだがな、と」
ぐっと顔をあげさせる。
「ご奉仕してもらおうかな、と」
指を引き抜いてレノがの顔のほうへと回る。そして何が起こるのかと顔を上げていたの口の中に無理矢理レノが自分のモノを押し込む。
まだ適度な軟らかさをもっていたレノのモノを歯を立てないように無意識に注意しながらゆっくりと舌を絡ませはじめる。頭を掴まれた状態で苦しくても外にだす訳にもいかずに何度も涙目になりながら拙い作業を繰り返す。
子猫がミルクを飲むように舌を動かしてどうにかして射精を促そうとする。
「もういいぞ、と。ヘタクソめ」
ヘタクソといわれたことよりも、ようやく口から解放されたことに安心感を憶えては上半身をベッドへと沈めた。
口から引き抜いたの唾液塗れのモノを後蕾にあてがう。侵入するのを拒むように中々開こうとしない後蕾を無理矢理指で開き、レノは体重をかけてゆっくりと身体を使って押し込んでいく。
「いっ……」
ぎりぎりと枕をぐっと掴んで痛みに耐えようとする。
「や、だ。まっ…レノ」
「待てないぞ、と」
息を深く吸ってぎゅっと目をつぶる。紅潮した頬に柄もなく興奮を感じながら、なるべく痛くないように慎重に押し込んでいく。
「レノぉ…」
「なんだよ、と」
潤んだ目でレノをみる。
「痛い。もぉ、やだ」
が初めてだからいけないんだろ、と。まぁ、少し黙れよ、と」
腰に手をあててゆっくりと挿し抜きを繰り返す。
「あ…あ…」
「痛くないからな、と」
レノが抜き挿しするたびに卑猥な音がの喘ぐ声と一緒に部屋に響く。
「んぅ…や、あ…」
痛みだけだったの声に快感が入り交じりはじめる。にぃ、と笑ってレノがのモノに指を絡ませる。
「ふぁっっ」
予想しなかったいきなりの快感に身体を大きく震わせて微かだった頬の紅潮が一気に紅をさす。その変化に嬉しくなりながらレノが深く体重を重ねて一気に押し込んでいく。ぎしりとベッドのスプリングが鳴く。
本気になるのは誰なんだろうな、と。
「あ、あ…あ」
多分も予想していないのだろう。無意識に出ている声。だんだん色っぽさを増していく。既に行為によって軟らかくなった後蕾に目を向けてレノが最後と言わんばかりにギリギリまで引き抜いて一気に押し込んだ。
「レノ…レノぉ…」
たどたどしくレノの名前を何度も呼ぶ。彷徨うようにのばされた指がシーツを軽く掴んでその腕に重ねるようにレノが腕を重ねる。
爪で軽く先端を引っ掻きながら耳たぶを甘く噛む。
「ふぁぁっ」
甘い声をだしてがレノの手のなかに精液を放出させる。余韻で腸壁を震わせる中にレノも中へ大量の精液を流し込ませていく。
「ん…く…」
レノが引き抜き、ぐったりと四肢を投げ出しているの髪に触れる。汗で筋になっている髪をもてあそびながら後蕾から流れだす自分の精液を複雑な気持ちで見つめる。
「レノなんて嫌いだ。痛いし」
突っ伏したままぽつりと呟く。
「あぁ?仕方ないな、と。責任とってやろうか、と」
じろっとにらんでがレノの腕を払う。
その様子に苦笑しながら耳元に口をよせる。
「俺様が本気になってやるぞ、と」
いつもより低い声でレノが囁いた。

END

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